アズールレーンとアイドルマスターのコラボに端を発したおもひで

あのころぼくは中学生で、太鼓の達人という音ゲーが好きで、学校の放課後、足しげくゲームセンターへ通っていました。ぼくは部活動をしていて、そんなにゲームセンターへは行けなかったけど、時間さえあれば店へ行って太鼓の達人をしていた。そんなころ、ぼくは美少女アニメに没頭していた。当時でいえば萌えアニメというもので、ハルヒだの、らきすただの、そういうアニメに夢中でした。ぼくは二次元にしっかり肩まで浸かっていました。で、太鼓の達人をプレイしに店へ行くと、いつも気になる他のゲームがありました。それがアイドルマスター。あのゲームは、たしか、2005年とか、そのあたりにリリースされたはずで、ぼくが中学生の時分には、どのゲームセンターへ足を運んだって、かならずアイドルマスターがありました。ぼくは、気になってしかたがなかった。かわいい女の子がわんさといるじゃないですか。どういった内容のゲームなのか、見当はつかなかったけど、とかくやってみたくて仕方がない気持ちでした。でも、ぼくはついに、アイドルマスターのアーケードに座ることがありませんでした。それは、当時というのは、そういった、美少女アニメだの、美少女ゲームだのを嗜む人物は、オタクと呼ばれ、世間一般から忌み嫌われ、否定され、詰られたり笑われたりするような、そんな風潮が、たしかにあったのです。それは、2021年現在でも、すこしはその風潮の名残のようなものはありますが、NHKやゴールデンタイムのバラエティに、キズナアイが登場したり、アニメ声優が登場したり、美少女アニメの映像が流れたりしていて、ある程度は世間一般から認知、受け入れられつつある現代の空気とは、当時はまったく違いました。徹底的に、完膚なきまでに、拒絶されていました。だから、よりにもよって、学校でハルヒらきすたの話をしようなんてのは、もってのほか、完全なタブー行為で、ましてや、ゲームセンターという公衆の面前で、アイドルマスターの台へ座ろうなどということは、自殺行為に等しく、どれだけ差別的で、偏見的で、侮蔑的な目で見られ、言葉をぶつけられ、しまいには殴ったり蹴ったりの目にあわされるやら、ああ、それはもう果てしもなく恐ろしいビジョンしか、それしか想像つきません。とかく、当時は、親に、兄弟に、友達に恋人にクラスメートに、先生に、世間に、自分がオタクであることは、なんとしてでも隠し通さねばならない、自室のドアを閉め、窓を閉めカーテンを閉め、電気を消して、まるで盗品の酒をちびりちびりを舐めるかのように嗜むしかない、この世で最も罪悪の趣味でした。