東京へ行ってきたpart2

あらすじ:友達と九十九里へ行って海で遊んだ。

16時になると海水浴場に設営されたスピーカーからアナウンスが流れて、もう海に入ってはいけないとのことだったので、海からあがって、友達と砂浜で海をながめながら煙草を吸いました。強い波をながめながら、野郎二人が並んでいる有様は、さながら映画「ノッキンオンヘブンズドア」のラストシーンのようだったと想像せられます。
こんどは九十九里から品川へと帰ります。帰りの道中、友達がSpotify筋肉少女帯を流してくれたので、ぼくは筋少について語りたかったのですが、演奏がうるさいので、語るタイミングがありませんでした。煙草を吸いたくなって、どこかのパーキングエリアへ立ち寄ってみると、喫煙所が封鎖されていて、煙草を吸えるところがありませんでした。「まぁえかろう」と言って、人目のつかないところで喫煙して、火種をキッチリもみ消してゴミ箱に放り捨てましたら、友達は軽く引いていました。やはり、都会で育った人というのは、そのあたりのマナーというか、道理、貞操、品性のようなものがしっかりしていて、ぼくのような、駐車禁止の場所に車をとめたり、言葉遣いが汚かったり、部屋着にサンダルで街をうろつくような低俗な田舎者とは違うことを実感させられました。そういえば、行きも帰りも運転は自分だったのですが、友達はたびたびぼくの運転技能に感嘆していました。自分はそんなに運転が上手だとは自覚していないのですが、どうやら岡山という車がなければ生きていけない町に暮らしている人間の運転技能は、都会の人からすると大したものに見えるようです。
品川へ到着してレンタカーを返却すると、こんどは秋葉原へ電車で移動しました。とにかく、東京は高い建物と大勢の人に囲まれて周りの状況がわかりません。キャリーケースをごろごろ転がしながら、友達についていくしかありませんでした。周囲からこのキャリーケースを転がす音がうるさいとか、田舎者が、とか思われているのではないかと、ヒヤヒヤする思いでいました。
秋葉原の駅に到着すると友達に「こっちの出口が電気街、こっちの出口が飲食街」だと案内されました。おそらくオタクショップでも見て回らないか、という提案なのだろうと思いましたが、ぼくはとにかく腹が減ってどうにもならないので、飲食街のほうへ出口を出ました。空腹に酒を入れるのはよくない、ということで、居酒屋へ入る前にラーメン屋へ寄りました。友達はそこでラーメンとチャーハンとギョーザのセット、ぼくはチャーハンの単品のみ頼みました。食後、店を出るまえにいったんトイレに入って、そこで胸ポケットに忍ばせておいたフルニトラゼパムを口にふくみ、席に戻って水で流し込んで準備完了、ぼくはかならず人と酒を飲むまえにこの薬を飲むようにしています。ほんとうはアルコールを摂取するまえに薬を飲むのはよくないのですが、ぼくは酒が入ったとき楽しく酔うことより暗くなることが多くて、フルニトラゼパムを事前に飲んでおくことで必ず明るく楽しく酔うことができます(ただ記憶がだいぶあやふやになりますが)。
ラーメン屋を出て友達におすすめの居酒屋へと足を運びます。このあたりから記憶が正確ではないのですが、地下にある居酒屋だったような気がします。そこで枝豆や馬刺し、鳥皮の串焼きなんかを注文しながら、ビールをたらふく飲みました。「会社員はどんな仕事よりも困難だから、会社員ができるならユーチューバーだってなにをしたって食べていける」とか「おまえは人から信頼を得るのがうまい」とか、そんな話をしたのはかろうじて憶えているのですが、2時間ほどずっとくっちゃべっていたのだから、もっと他に話したことがあるはずですが、そこはやっぱり服薬の副作用で、なにも思い出せません。
居酒屋を出たあと、上野のホテルまで移動しましたが、その間の記憶はいっさい残っていません。ただぼくがあんまり泥酔していたので、心配した友達がわざわざ上野のホテルまで連れて行ってくれて、ぼくはフラフラとただいい気分になりながら友達について行って、ホテルの前へ到着したとき、別れ際に握手をしました。ぼくの中ではどうやら、彼との別れのときはこの握手がお決まりになっているようです。
(つづく)