紙袋

手提げ紙袋を見るといやな思い出が蘇る。子供の頃、春、母親に連れられて兄と花見に行ったのだけど、母親が作った弁当を入れていた紙袋の底が破けて、弁当箱が落ちて、中身がぶちまけられてしまった。俺は呆然と立ち尽くした。兄は人のたくさん通る場所で人目も憚らず散らばった食材を拾い集めて、破れた紙袋に包んだ。外国人が笑っていた。俺はあんなに恥ずかしい思いをしたことが無い。そのあと、母親は極限まで機嫌を損ねた。