荒巻の打撃練習論

おやじのいびきがうるさい…。ノイローゼになりそうだ。うるさいといっても離れた部屋から「ゴゴ…」と聞こえてくる程度で、べつにやかましい騒音ってわけじゃないんだけど、この音がどうにも耐えられないほど酷く不快で、ほんのわずかでも聞こえてくるだけでイライラしてしかたがない。きっと呼吸器科とか受診すれば治療できるんだろうが、「おれが不愉快だから治療を受けろ」はわがままのように思う。人間はおよそだれもがわがままなのでたいていの人は言えるんでしょうけど、ぼくは人間みたいに愚かでもわがままでもないですから。
きょうは朝7時から仕事に行った。現場仕事のつらいことのひとつは朝が早いこと。以前草野球のチームにいる、おそらくぼくより2、3若い子と話をしたら、トラックの運転手をしているらしく、朝4時に起きるそうだ。とんでもない、きっと早死にする。仕事は14時には終わり、1時間後に帰宅して、バッティングセンターへ向かった。おれがバッティングセンターへ行くのは、正確に記憶してはいないが、半年以上ひさしぶりのことと思う。ほんとうはもっとコンスタントに通わないと打撃の技術が衰えてしまうんだけど、なんだかその気が起きなくて、きょうも半ば無理やり、自分にムチ打つ気持ちで足を運んだ。でもそうして無理した甲斐はあった。このごろ試合であまりに打てなくて、自分でもどうすればいいのか見当つかず、もがき苦しんでいたところなんだけど、店へ行ったことでようやく自分の不振の原因が判明した。しょせん野球は調子が悪いとき、数をこなしてその中でヒントを掴むしか解決策はないのだと思われる。しかし、おれは、素振りというのは、いい練習だと思わない。むしろ、調子を悪化させる行為なのかもしれない。打撃はつまり高速で自分に向かってくるボールをバットの限られた一部分で捉える動作なんだから、それに近しい状況を準備しなければならない。なのに素振りはボールが高速で向かってくることもないし、それを打つこともしない。「リアルのバッティング」とはずいぶんかけ離れた動作だ。その中で培うスイングや、タイミングのとり方、ミートポイント、筋力の使い方、また思い浮かんだアイデアは、果たしてリアルに則しているかどうか?おれはまったくの的外れだと考える。もちろん想像力を働かせることもできる。そこにピッチャーがいて、投球モーション、ボールが投げられ向かってくる、そこへバットを出す。そうしてイメージしながら素振りすることもできるけど、それはやはり架空のものだし、身につくのは架空のための技術。リアルはもっと違う。リアルに則した技術を身につけるには、リアルな練習をするのが1番いい。