俺はクールだ

「ひとりでしにたい」という漫画を読んだ。

結婚も子供も予定していない独身の女が、どのようにして老後を迎え死に至るかを計画していく内容の漫画なんだけど、悲惨な孤独死であったり介護問題であったり、さまざまな頭の痛くなるような悩みについてネットで調べたり会社の仲間からアドバイスを受けていて、主人公は喜怒哀楽の強めな女性であるが、諸問題についてはいたって冷静に思考し情報をまとめているのを見て、そうか、現実のいろんな厄介な問題は、あわてずパニくらず落ち着いてクールに考えれば、そんなに厄介ではないかもしれない、と思った。

よし、俺の諸問題をクールに考えてみよう。まず収入がない。これはよくない。というか最悪。収入がなければ買い物ができないどころか、歯が痛くても歯科にいけない、腰が悪くても整骨院に行けない、鼻が詰まっても薬を買えない、車の税金が払えない、クレカの支払いができない、うんぬんかんぬん。あらゆることが不自由になる。しかもそういった不自由によるものか、収入がないと人間は気が狂う。ウーバーイーツなんかは時給で換算すると600円だと聞いたことがあるけど、600円でも収入は収入だ。収入がありさえすれば人間は発狂を抑えられる。しかし0円だと徐々に気が違っていく。だからとにかく、収入源を切り開かねばならない。俺のスキルでできること、絵を描く?いや俺の技術では売り物になりそうにない。パソコンを組み立ててメルカリで売り払う?手数料や送料を考えると利益どころか損になりそうだ。だからふつうに雇用されて働くのがいちばんなんだけど、職歴のないまま30歳にもなってしまった。こうなると雇ってくれる企業もなくなる。きょうも派遣に応募してエントリーを拒否された、2件。何者であろうと雇用して苛烈な労働を強いるような企業だったら雇ってもらえるだろうが、そんなとこいって3日で逃げ出してもしかたがない。いまのところ現実的なのはウーバーイーツなのかな。先がなければ給料も最低賃金を下回ってておまけに最も職業差別を受ける仕事ではあるが……とにかく収入が無ければ気は狂うし歯医者にも通えないんだ。やるしかないだろ。

よし、クールに考えてみるとやはりなにかしらの結論は出るもんだな。あしたウーバーイーツに応募しよう。