おれが5つほど歳の若い子にマジにショックを受けた話

だいたいだれでもスポーツをしている人ならその競技を「もっとうまくなりたい」という意思をもって頑張ると思うのだが、草野球をやってる俺はそんな意欲がとんとなかった。まぁ運動しに行く程度のつもりでやっていればいいだろうと思っていた。2月ごろ、仲のいいチームから声がかかり、プロ野球のキャンプにも使われる立派な球場の投球練習場を使ってみんなでブルペンをやるというイベントがあった。うちのチームからは俺ともうひとりが参加した。俺はなんとなく自チームのユニフォームを着用して参加した。それから何日かたつと、チームに新規の若い子が入ってきた。最初はただのどこにでもいる好青年だと思っていたのだが、3試合もするころには俺はその子を師匠と呼ぶようになっていた。圧倒的だったのだ。「こんなに野球がうまい人間が存在するんか?」というくらいの、ほぼすべてにおいて高いレベルでこなすウルトラプレイヤーであった。ただ走塁だけ甘さが見られたが、その程度だった。しかし俺が師匠などと呼び出したころはまだシャレのつもりだったのだが、10試合、20試合とたつにつれて、師匠は圧倒的な力と技術を放ち続け、さらに野球に対する真剣な姿勢をも見続けているうちに、すっかり感化されて、もうじき30になろうかというこんな歳になって「もっと野球うまくなりてぇ…」と思うようになった。俺よりずっと若い青年にハンマーでぶん殴られるほどの衝撃的な影響を与えられた。いつしか俺は師匠をはじめ若い子たちになりふりかまわずバッティングやピッチングの教えを乞うようになった。俺が人から野球を教えてもらうようになったのは、小学生以来のことだった。今年のチームの活動もそろそろ終わるというころに、師匠とあと何人かでだべってた拍子、師匠から聞かされた話なのだが、なんでも今年のはじめ、ある球場のまわりをランニングしていると、投球練習場で一風かわったユニフォームを着てブルペンしている人が目について、ネットでどこのチームかを調べてみて、そうしてウチのチームに入団したのだという、入団のいきさつを聞いた。どうやらそのユニフォームを着ていた人物は俺らしい。その話を聞いて、なんだか生きててよかったなと思った。