頑丈さと才能

むかしのプロ野球では140キロをこえれば速球派とされていたが現代ではすくなくとも150キロはこえねば速球派とは呼ばれない。140台の投手は技巧派・軟投派のあつかいをうける。戦後やON時代の投手となると130ですら速いほうだったかもしれない。また球場のひろさも両翼90メートルから現代では100メートルとなっていて、ボールを飛ばす力がもとめられるようになっているが、それでも村上や柳田のように逆方向スタンドで軽々と放り込むモンスターパワーの持ち主が登場している。
むかしのプロ野球とくらべてあきらかに選手の技術やパワーは向上しているのだが、その一方で先発投手は中6日という以前とくらべてずいぶん長いスパンのローテーションで運用されているし、それでもケガする先発投手はすくなくない。野手でも143試合フル出場できる選手はそうとう限られている。つまり現代の野球選手はスピードやパワーはアップしたけど脆くなったといえる。それはなぜだろう。もちろん科学的トレーニングの導入等もあるだろうけど、俺が思ったのは一因として、根性野球からの脱却があるかもしれないということ。というのは、昭和の野球部ってのはもはや軍隊で、真夏であろうと水を飲むことを禁止されていたそうで、実際俺が通ってる草野球チームのおっさんもそうだったと証言している。それくらい身体へ苛烈な負荷をかけながら高校、大学と耐えられた、つまり頑丈な人間だけがプロへと進むことができる。逆に頑丈でない選手はたちまち選手として致命的なケガをしたり逃げ出してプロにはなれないのだが、もちろんその中には才能のあるやつもたくさんいただろう。現代ではとうぜん休憩時間を設けてその間に水分や栄養を摂取できるし、理不尽な体罰やいじめ等も(いまだに存在してるとはいえ)緩和されつつあるし、高校時代の佐々木朗希なんかがいい例だけど監督が選手のコンディションを考慮するようにもなったし、つまり頑丈じゃなくても最後まで野球を続けられる環境が整いつつあり、そしてそこでプロへ進むのは頑丈なやつではなくてとうぜん才能のあるやつだ。だから150キロをこえるピッチャーが続々登場して、なかには160キロを投げるようなやつもいて、逆方向スタンドへ放り込むバケモンみたいな選手も現れるようになったのだろう。